デパートの停電 の巻

 バイト先の屋上に雷が落ちて停電した。

真っ暗なデパートと、真っ暗な雰囲気の黒柳徹子ほど役割を果たさないものはなく、笑えなかった。レジは使えないし、第一、ど〜こに何があるのか、とんと見当がつかぬ。

しかもクーラーも切れていてむし暑い。私のいる階は地下なので余計にそう思えるのだろうが、まるで防空豪のようである。

だだっぴろくて真っ暗な洞穴に人だけはうようよいて、みんなちょっとおびえている。

あー、電気の恩恵をわたしたちはかなり受けているとつくづく思う。エジソンさんありがとう。いやいや、東京電力さんありがとう。いつも支払い遅れてすみません。いやいや、そうではなく、電気さんありがとう。

停電は一時間経っても二時間経っても復旧しないので、わたしたちはちーっこい豆電球と懐中電灯でお客さんに対応するしかなかった。

てんぷら屋にいる、生気がまったく感じられない暗ーいある店員なんて、顔に懐中電灯をあてたら、まるでお化け屋敷のバイトのようである。

そんな状況にもかかわらず、うちのせんべい屋にも客は来た。真っ暗なショーケースの中を一生懸命のぞいている。

何が彼をそこまで駆り立てているのかは知らんが、こういう客がいる限り、店をたたもうなんて思っちゃいかんなあとちょっと思った。

熱心な客もいれば、熱心な店員もいるもので、暗闇の中、どこからかかけ声が聞こえてきた。

揚げもの屋である。

死にそうな店員のいるてんぷら屋ではない。そのとなりのとなりの揚げもの屋である。

その揚げもの屋には、「毎日揚げものを食ってます」といわんばかりの健康そうな?おやじが立っている。

彼はいつも、ひょっとしたらそれは聖痕現象の一種か、それでなかったら枯れることのない命の泉のように顔から油を出している。

さらに油の量も増えただろう蒸し暑い暗闇の中、彼は叫んだ。

元気に叫んだ。

「はい、揚げたてで〜す!」

「‥‥何が?」

口に出しては言わないものの、まわりの誰もが思ったに違いなかった。

このようにして、デパートの停電は約3時間続いた。

その間、電気がつかないのはもちろんのこと、エレベーターやエスカレーターも完全に止まっていた。

一瞬電気がついた時があり、幸いエレベーターの中にいた人たちは外へ出たらしいが、本当に停電のデパートは役割を果たしていなかった。

それにしても落ち込んで真っ暗な雰囲気の黒柳徹子さんって、申し訳ないけどちょっと見てみたい。

 ’02 8/24