たいへんななくしもの の巻

 ついにやってしまった。お財布をなくしたのである。

 かつてエメラルドグリーンとよばれた、今では汚れて、きゅうりの漬け物色と化した、犬のキーホルダーのついたガマ口である。

 600円しか入っていなかった。よかった。クレジットカードも入っていなかった。よかった。(カードはかつて、年に3回財布をおとした年があって、母にひどく怒られ、以来、財布とは他のところに保管していたのである)あとは、レンタルCD屋の会員証、スタジオの会員証、コンビニのわけのわからんレシートくらいである。もし取った人がいるならこれほどつまらぬ財布はないであろう。しかも きゅうりの漬け物色をしている(関係ないか…)

 しかし、私はちまなこになって探した。

 なぜか?それはその中に、フィットネスクラブの会員証が入っていたからである。

 あの会員証についている写真は、たとえへその緒はみられても、あれだけはみられてはいけないほどひどいのだ。明らかに偽造したと思われる、わざと太って見える写真、すなかけばばあもびっくりで、あんなもん人にみられるくらいなら死んだ方がましである。

 それがよりによって、おとした財布の中に入っていたとは…。しかもひろった人だって、600円しか入ってないケチな財布の持ち主は「ああ、やっぱり…」と思うではないか!

 ああ神様、どうか、他のものはいいからあの会員証の写真だけはみられないように返却して下さい…。

 数日後、フィットネスクラブから電話が来た。

「あきば様の落とされた財布が○○タクシーで保管されているそうです。中に入ってたうちの会員証でお電話いただきました」

 私はわなわなと震える手ですぐさま、そのタクシー屋さんに電話した。

「あの…こないだ財布を落としたあきばですが…」

「あー、あのあきばさんね」

「あの」って何だ?「あの」って…。わたしはもう少しで叫びそうであった。

「みぃ〜たぁ〜なぁ〜」

 みなさん、犬のキーホルダーのついた、きゅうりの漬け物色のガマ口には注意しましょう。中にはすなかけばばあ以上のものが入っています。

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