<<(日記より)痛烈!ネタ人生 編>>

 (1)

 春になると思い出す先生がいる。

小学生のころ、出島先生という国語の先生がいた。当時で40才後半くらいの背のひょろっと高い、優しい先生だった。

わたしは出島先生が大好きで、休み時間になるとよく、「出島先生あそぼ」といって職員室へ行ったものであった。

 そんな出島先生が3月30日付け転勤になる年があった。私は出島先生に手紙で今までありがとうという感謝の気持ちを贈った。

 離任式の当日、出島先生は他の転任される先生方とともに壇上にならんでいた。一人一人転任される先生の名前と行き先を教頭先生が読み上げた。

出島先生の番がきた。すると、教頭先生はこう言った。

「××小学校へ転任される 田中先生です」

「えっ?ちがうんじゃないの?」

 私は思ったが、出島先生は何の躊躇もなくお辞儀をした。私はおかしいなと思いながらも、となりの子に、

「あの先生は出島先生なのに田中先生だなんて、教頭先生まちがったよ。」

とささやいた。するととなりにいた友人はとてもびっくりした顔でこういった。

「たまちゃん、あの先生のこと、ずっと出島先生ってよんでたの?
あの先生の名は田中先生っていうんだよ。出島っていうのはあだ名で、髪型が長崎の出島みたいだからそうよばれてたんだよ。」

 なるほど、よく見ると、彼の頭は両サイドが禿げあがっているのに、眉間にむかって何故だかこんもりとした毛のかたまりがあって、まるで長崎の出島だ。そして友たちは付け加えた。

「結構本人はげてんの気にしてるみたいだったから、みんな本人の前では出島なんて言ったことないよ」

毎日毎日本人の前で出島発言をしてた私はその時、はじめて

「穴があったら入りたい」ということわざを実体験したのだった。 

なにもいえず、目もあわせることができないまま去って行った田中先生、ごめむね。

'01 4/2

 (2)

 養命酒を飲んでるくらいである。体力には自信がない。

そこで、全国でチェーン展開をしている、フィットネスクラブに今日、入会してきた。お金はないので一番お得で、安いコースに決めた。

 私は、入会の用紙に、必要事項を記入したあと、会員証につける写真を撮るからと、デジカメの前に座らされた。

「はい、ありがとうございました。処理をしますので、カウンターのところでお待ちになって下さい。」

笑顔で、その受付の人は言った。

私側から、その撮られた写真の画面は見えなかったので、気になった私は、カウンターに戻る前に、そのパソコンの画面をのぞいてみた。

 たいてい、証明写真など、きれいに撮れてはいないので、あまり期待はしていなかったのだが、そのパソコンの全面に写し出された写真を見て、私は千昌夫のほくろもとれるくらいびっくりした。

その写真はひどいとかのレベルではなかった。顔が台形なのだ。

 どう考えてもおかしい。私は顎を引き過ぎるくらいに引いて撮ったつもりなのに、あきらかにその写真は下からのアングルで撮られているみたいだ。

写真のあきばは、やたら頬の突き出した、ちょっと痩せた小錦のようになっている。しかも、乱暴に写真を機械からひっぱりだしたみたいで、目や額のあたりは、やたら伸びてゆがんでいる。まったく、この世のものとは思えない写真なのである。

 わたしが、その写真のあまりの凄まじさに唖然としていると、

「はい、できました」と言って、勧誘の時間はやたら長いくせに、もうその写真を会員証に張り付けて、笑顔で渡されてしまった。「撮り直して」と言う暇もない敏速さであった。

 ・・・あれは、手口なのだろうか?入会時にわざと太ってみえる写真を撮っておいて、文句をつけさせる間もなく、その写真を焼きつけておいて、シェイプアップ心をあおろうというのか?

半年くらいたったところで、わざとらしく、写真と見比べて、「あきばさん、入会時にくらべたら随分痩せましたねー」とか言っておいて、高額ダイエットフードでも売り付けるつもりなのか?

私はその受付のねーちゃんに弱々しく尋ねてみた。

「あのー、このカード、有効期限はいつまでですか?」

「有効期限はありません。ずーっとそのカードはお使いいただけますよ。

絶望的な答えだった。今どき、パスポートでさえ、10年が期限なのに、こんな砂かけばばぁみたいな写真のついたカードを一生持ってろというのか?

私はその会員証をどこにしまおうかまだ迷っている。財布の中では取られたら、ただでさえ、お金が入ってなくて驚かれるのに、追い討ちをかけるようにもっと驚かれてしまう・・。

 とにかく、クラブに行くとき以外は見られないよう、完全に封印してしまわねばならぬ。はらまきの中に入れて常に携帯しておくか?考えると運動せずとも痩せてしまいそうである。

'01 4/26

 (3)

 初めてフィットネスクラブに行った。

例の、砂かけばばあの写真のついた会員証を財布より(結局、保管場所は財布の中にした。)こそこそと取り出し、受け付けがおわると、それをかっぱらうようにして財布へしまう。これでは盗んだ会員証で通おうとしてるどろぼうさんみたいではないか。

 とにかく、受け付けをすませ、更衣室へ向かう。私は色気もなにもない競泳用の水着に着替え、ロッカーに鍵をかけようとした。

すると、なんとその鍵は、あの例の会員カードをトビラにはさんで施錠する形で、施錠すると外から、丁度、名前と顔写真が見えるようになっていたのだ!

愕然としながらも、早くその場から離れたい一心で、私はそのすなかけばばあの写真付き会員証が見えるロッカーから駆け出し、プールへむかった。

 プールで泳ぐと集中でき、いやなことを忘れることができる。目下のところ、一番の私の悩みは、あの会員証なのだが、水の中ではそれさえも忘れて魚になれる。(そう思っているのはきっと私だけで、外からみたらただ溺れているようにしかみえないのだが)

 ひとしきり泳いだあと、ジャグジーにつかり身体の疲れをほぐす。これで、おおきな扇ときれいなねーちゃんがいたら、まるで王様である。そして私は王様気分のまま、シャワールームへ向かった。途中、サウナがあったのでここへも寄ってみることにした。

誰もいないサウナの中で、私はでんと寝ころがり、さながらキンカブタ(中国の高級料理に使われる珍ブタ)のようであった。

私はその気持のよさに、運動後なのにもかかわらず、サウナに長居してしまった。気付いた時には世界がまわっていた。慌ててサウナの外にでると、フラ・・・私はその場にうずくまってしまった。気持悪いのである。死ぬ程気持ち悪くなってしまったのである。

 何人かの人に「だいじょうぶですか?」と声をかけられ、顔面蒼白のまま、「だいじょうぶです」と答える。何がだいじょうぶなものか。死ぬ程だいじょうぶではない。とても、じょうぶに大をつけられる身体ではなかった。

 しばらくその場でうずくまった後、何とか私は立ち上がってロッカーの前まであるいた。体力増進のために通い始めたのにこれでは体力減退ではないか、と思いながら私はふと顔をあげた。

するとそこには、あのすなかけばばあの写真の下に、あきばたまみ とはっきりと印字された会員証が堂々とかかげられていたのである。

しかしその時、水にぬれたもったいないお化けみたいだった私は、その写真を見てもたいして驚かなかった。ナンマイダ ナンマイダ。

'01 4/29