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今日はホワイトデーだ。 ホワイトデーといえば、いまだに謎の贈り物がある。 それはまだわたしが中学生だったころのホワイトデーの晩の事だった。そのころわたしは、なんと家族の夕食をつくっていた。 ちょうど、しょうゆが切れたので、じいちゃんにおつかいにいってもらうことにした。 「じいちゃんおつかい頼んでいい?しょうゆ買ってきて」 じいちゃんは、見かけは恐い顔をしてるものの、密かにセキセイインコを飼ってたりして、かわいい人だった。 「はいよ、しょうゆね」 じいちゃんはのそのそとコンビニへ出かけていった。 30分後、じいちやんはおつかいからかえってくると、コンビニの袋を私に渡しながらこう言った。 「はい、ホワイトデー」 私はなにかと思ってそのコンビニの袋の中をみると、どうしてだろう? そこには片栗粉がひと袋入っていた。 これはどういうことなのか? 「今日はホワイトデーだね」というごあいさつのつもりで言って、買うものを間違えたのか? それとも今日はホワイトデーと知っていて、「ホワイト」だから白いものを渡さねば、と思って片栗粉を買ったのか? どちらにしてもじいちゃんはしょうゆを買うのを忘れたのである。 じいちゃん、そんななぞなぞはいらんから、わたしはしょうゆを買ってきてほしかったんだけどなあ。 '01 3/14 |
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実家の母から電話があった。 いとこが結婚したという知らせであった。 電話があったのは午後9時。 最近はずいぶんまともな時間に電話をするようになった。 つい5、6年前までは、朝5時に電話が鳴っていた。 そんな朝早くに実家から電話があるとだれか死んだかと思うではないか。 「どうしたの?」 私がびっくりして電話超しに母に言うと、母はひょうひょうとした声でこう言った。 「あんたんとこに チーズ鱈 送ったから。」 「はっ?」 「だから、チ・イ・ズ・た・ら。あの、タラの薫製にチーズはさんでるおつまみ、あんた好きだと思って送ったから。それとも忘れちゃったの?」 いや、チーズ鱈のことは知っている。 そうではない。 なぜ朝5時に薫製の話をしなければいけないのか、それがわからなかった。 '01 3/26 |
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今日は、家族で久しぶりに温泉に行った。 福島は車で1時間も走れば、温泉に着く。 今日は高湯温泉に向かった。母、陽子の運転である。 走りなれているはずの道、標識に「高湯温泉この先右折」と書いてあるのに、それを無視して直進する。 どうしてかと父がたずねると、陽子は平気な声でこう答える。 「だって、なんだか、目がぼやーっとして、何が書いてあっか、わかんねんだもの」 父、私、沈黙・・・。 おいおい、信号は見えているんだろうな、陽子さん。 そう思ってかなり心配になってきたとこで、今度は、車体の下のほうから、なにやら、ゴゴゴゴという音が聞こえてくる。 「な、なんなの、この音?」 顔面蒼白でわたしが聞くと、またしても陽子、平気な顔で、こう答えた。 「なんだか、エンジンにカスがたまっちまったみたいだね。」 カスって何だあ?エンジンにカスなんてたまるのか!そんな平気な顔して、火でも吹いたらどうするんだ。 そんな私の心配に気付いたのか、父、和男、早口でこう言う。 「も、もっと、とばせ!温泉についたらなんとかなっぺ!」 ‥‥いや、温泉に着いたとこでなんともなりはしない。 私は温泉につかってもいないのに、完全に湯冷めしたかのようで吐きそうだった。 '01 5/14 |
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父の日である。 私は、実家の父、和男に、日本酒を贈った。 届いたかどうかも連絡がないのであるが、まあいい。 父和男は、日記にも何度か登場しているが、とても変わった、それでいてとてもかわいい人である。 この間も、金貸業のプロミスが募集してた「約束」というテーマのエッセイを、彼は私と交わした約束について書いたからといって、そのエッセイのコピーをわざわざ、東京に送ってきた。(和男は賞金目当てではないと断言していたが、この場合、明らかに賞金目当てである。) そのエッセイによると、どうやら私は20年前、父、和男が、大好きな生きたどじょうを柳川鍋にして食べようとしている現場を見て、ひどく憤慨し、もうすでに卵でとじられたどじょうを鍋ごと庭にもっていって、庭の椿の木の下に埋めたそうである。 そして、父 和男に向かって私は 「私もちっこいいのちをたいせつにするから、お父さんもちっこいいのちをたいせつにして下さい。」 と言ったそうである。 私はそんな約束をしたことは、機密費問題の塩ジイのようにまったく覚えてなく、「忘れました」の世界なのだが、実家では「どじょうのはか」と書いてある大きめの石が、いまだにその椿の木の下にあるらしく、さらに、父、和男は驚いたことに、あまりにその自分の娘のとった行動がショックだったのか、その日以来、どじょうを20年間本当に食べていないのだという。 たかだか、どじょうの話ではあるが、そのエッセイをもらった時はなかなか感動した。 その後、あのエッセイが入選したかどうかは聞いてないが、母の話によると、父 和男は黄色い看板の前にくると、 「借金は身をつぶす」 と必ず言うそうである。 '01 6/17 |